自動売買にまつわる定説を疑う

今回は、自動売買にまつわる以下の定説を疑ってみたいと思う。

  • 自動売買(システムトレード)では、必ずシステムのサインに従わなければならない
  • 自動売買は感情を排除することができる

こう書きだすと、結論が予想できてしまうと思うので、まず、結論をサラッと。

「自動売買(システムトレード)では、必ずシステムのサインに従わなければならない。」
ホンマか?

「マーケットの魔術師~システムトレーダー編~(アート・コリンズ著、パンローリング社)」は、システムトレードで成功しているトレーダーに対するインタビュー集。
この中に出てくるトレーダーでも意見が分かれている。
サインに必ず従うトレーダー(完全メカニカル派)もいれば、
裁量介入しているトレーダー(柔軟派)もいる。
もちろん、どちらも成功しているトレーダー達だ。
そう、柔軟派でも成功できるのだ。
必ずしもサインに従う必要はない、ということだろう。
なお、私は柔軟派だ。

「自動売買は感情を排除することができる。」
ホンマか?

コンピュータがトレードをするので、人間は感情に左右されずに済む。
徹底的にバックテストをすれば、その売買ルールに自信が持て、感情に左右されずに済む。
もっともらしく聞こえるが、実際はそんなことはない。
少なくとも私にとっては。
感情を排除するために自動売買を始めたが、感情に左右されまくりだ。
特に、チャートを見ていると、そうだ。
そして、板を見ていると、もっとだ。
感情を排除できているのは、寝ているときぐらいだ。
ちなみに、玉を持っていても、ぐっすり眠れる。
時々、夢の中でトレードしていることもあるが・・・
眠れないほどの玉は保有しない。
自動売買であっても、感情を排除するためには、それなりの鍛錬が必要だ。
なお、排除とまではいかなくとも、ある程度軽減されることは確かだ。

上記結論はあくまでも私の考え。
以下、補足する。

先ほども書いたが、私は柔軟派。
理由は、

  • 現実はバックテスト通りに行かないことも少なからずある。
  • バックテスト結果を絶対視していない。
  • 感情に負けてしまう。(柔軟派というより、軟弱派だ。)

現実はバックテスト通りに行かないことも少なからずある

必ずサインに従ってこそ、バックテストで確認した優位性が実現できる。
というのが、完全メカニカル派の意見だと思う。
しかし、現実はバックテスト通りに行かないことも少なからずある。
バックテストで考慮していない事態への対処が必要だ。

例えば、前回紹介した業者の保守によるインターネット停止。
バックテストでは、ネットワークの停止を想定していない。
こんなときは、自動売買のスイッチを事前に切っている。
つまり、サインが出ても無視しているということだ。

他にも、パニック時には新規注文を出さないようにしている。
このことは、『岡三RSS Excelファイルの内容』でも書いた。
バックテストでは、パニックを考慮していない。
パニック時に売買すると、バックテストで想定してるスリッページコストをはるかに超える可能性が高い。
また、パニック時には岡三RSSがハングする可能性もある。
自作システムには、パニックを感知する機能を組み込んでおり、パニック時には、売買ロジックが新規注文サインを出しても、サインを無視するようにしている。
なお、決済注文サインは無視しない。
(パニック発生前に玉を保有していた場合、起こり得る。)

バックテスト結果を絶対視していない

例えば、バックテストの結果、バックテスト期間5年間、トレード数1000回、勝率が60%となったとする。
(なお、勝率は分かりやすく例えるためのものであって、勝率でなくても、平均損益などでも良い。)
よくある考え方は、今後トレードをすればするほど、勝率60%になるという考え方だと思う。
いわゆる大数の法則。
しかし、私はそのようには考えていない。
これが、数学的確率で導かれた勝率であれば、大数の法則を信じる。
だが、バックテストでの勝率は統計的確率で導かれたもの。
統計的確率がダメと言っているのではない。
その時点における合理的な判断材料を与えてくれるため、意義がある。
だから、バックテストをする意味がある。
しかし、必ずしも将来を保証するものではないと思っている。
そう、無邪気に大数の法則を信じているわけではない、おっかなびっくり参考にしている、といったところだ。
現在進行中のリアルトレードも、将来のバックテストの1サンプルだ。
トレード数が先のバックテストと合わせて2000回となった時点で、勝率が40%になっているかも知れない。
この場合、1001回目~2000回目のトレードの勝率は20%だ。
つまり、実売買では負けまくりだ。
バックテストで過剰最適化を防げていなかった場合、こういうことが起こる。

感情に負けてしまう

過剰最適化をある程度防げていても、ドローダウンの恐怖がある。
ドローダウンは売買ロジックが苦手とする相場状況になったときにやってくる。
そう、必ずドローダウンはやってくる。
また、自分でバックテストをしていると、その売買ロジックの苦手とする相場状況や弱点が分かる。
そして、ここは早めに利食った方が良い、早めに損切った方が良い、などと思い、つい、手が出てしまう。
そのロジックの弱点も含めたバックテスト結果であり、もう少しバックテスト結果を尊重すれば良いのだが。
先に述べた通り、自分のバックテスト結果を絶対視していない。
「売買ロジックの弱点を裁量で補う」と言えば、聞こえがいいが、感情に負けて早めの決済をしている面もある。

採用している売買ロジックが、まだまだ自分の性格にフィットしきれていないのかも知れない。

で、裁量介入の効果のほどは?

システムのサインに従うかどうかは、個人の判断(ルール)次第で、どちらでも良いとしても、サインに従わない場合は、それなりの検証が必要だと思う。
結局、裁量介入をして良かったのかどうかが問題だ。
そこで、裁量介入結果を整理した。下図。

はじめに』にも書いたが、自動売買システムを1年ほど運用した。
自動売買システムに介入した場合、その都度トレード記録に介入の効果を〇×方式でつけている。
その件数を整理した。
なお、このデータは、自動で新規注文したものに対する決済への介入を対象としている。
この他にも、新規注文に対する介入(つまり、エントリーサインを無視したもの)も対象とすべきだが、記録をつけていない。サボっている。

売買回数474件は、複数の売買ロジックでのカウント。
例えば、3つのロジックが同時にエントリーした場合、3件としてカウントしている。
売買回数から、テストやバグ、オペレーションミスなどによる介入を除外した件数が454件。
これに対する裁量決済が148件、裁量介入率33%。
つまり、3回に1回裁量で決済している・・・思ったより多いなぁ。
ただ、◎〇が48%、×が18%なので、介入の効果があったと言えるだろう。

1/3の裁量決済、しかし、裁量決済の効果がある。
そして、つい感情に負けてしまうという現実。
これって、鍛錬不足もあるだろうが、その一方で、売買ロジックの「作り込み」が足りないのかも知れない。
ここは、今後の課題だ。

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